Rとは仲の良い友人だった。
友人だった…と過去形で表すのは、
ここ何年も 連絡を取り合っていないからで、
気持ちの上ではもちろんまだ友人だ。
彼は今 他県に暮らしている。
二人とも音楽好きということあり、
彼の提案でDJユニットを組もうという話になった。
相手のかけた曲の尻を継いで、
交互に選曲し合っていくという趣向だ。
ちょっとしたイベント会場などが
活躍の場になるだろう。
あまり人の集まる場所が得意でなく、
人前に出るのも苦手な僕だけど、
友達と一緒だったら勇気も湧くというもの。
いいね いいねと話はトントン拍子に拡がり、
早速ユニット名を決める段だ。
せぇので、お互い候補を挙げる。
僕が提案したのは "くびなが竜"
特に意味はない。ただその場での思いつきだ。
センスがないと叱られる。
彼が挙げた名前は "マニトバ"
何でも夢に龍が出て来て
「 マ・ニ・ト・バ 」と彼に告げたことに由来するそうだ。
マニトバとはカナダの地名であるが、
それは初耳だったらしい。
また当時マニトバという名義のミュージシャンが
活動していたのだが、それも知らなかったらしく、
彼にとっての“マニトバ”とは固有名詞でなく、
託宣による祝詞やマントラのようなものであったようだ。
名前の一部に"龍"の字を持つ彼のこと。
きっと龍とは何かしらの宿縁があるのだろう。
ちなみに彼の構想によると、
我々のほうの“マニトバ”は二人してキツネの能面をつけて
パフォーマンスを行う予定だそうで、
恥ずかしがり屋な僕にとってそれは奇矯が過ぎた。
結局、音楽性の違い以前に
ネーミングや演出センスの相違により、
我々のDJユニットは結成以前に暗礁に乗り上げた。
その晩、調べものが趣味の僕は改めてマニトバについて調査をしてみる。
なになに、
マニトバ州のマニトバ湖にはネッシーのような怪獣がいるらしく、
有名な未確認生物オゴポゴにあやかって、マニポゴと呼ばれている!?
これだ!!
まさか、“マニトバ”と“くびなが竜”がここで繋がるとは。
興奮のまま早速 彼に電話をかける。
Trrrr
「おい、R! 僕たちのユニット名は“マニポゴ”だ!」
「やだよ。ださいもん。やっぱ、 お前、ネーミングセンスないのな。」
……
はい。今もネーミングセンスないままです。
ヒマダコーヒーって、素っ頓狂な名前のカフェやってます。
ここでひとつ謎かけを。
ヒマダコーヒーと掛けまして、くびなが竜と解きます。
そのこころは、
皆さまのお越しを、首を長くしてお待ちしております。
えへへ、どうやらギャグセンスもない模様。
追記:
この記事を書き上げてすぐ、Rとバッタリまさかの再会を果たした。
再会を寿ぎつつも、何年ものブランクを感じずお喋りできるのは、
冒頭でも伝えたように、僕らが友人だからだ。
奇縁とは面白いものである。
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