僕は決して無口ではないのだが、
大切なことはあまり人に話さない。
栓を抜くと どんどん気も散じてしまう
炭酸飲料に感覚は近いかもしれない。
保存が効かなくなるトマト缶に例えても構わない。
要は大切なことも一度蓋を開け、外気に晒すと
なんだか劣化してしまう気がするからなのだ。
胸のうちに留めておくがよろしい。
店をやりたいことも、
店を始めることも、
屋号のことも、殆ど人には話さず
ひっそりと始めた。
けれどもたった一回だけ
“やるならヒマダコーヒー って名前がいいんだよね”って、
人に話したことを覚えている。
今から7~8年前なので、
店を始めるずっと前になる。
思えばその頃からネーミングを温めていたのか。
相手は杉江玲子とその旦那だ。
(当時はまだ籍を入れていなかった筈だが)
彼らについて、以前からの友人であること
それ以上 多くは語らない。
それはナイーブな、秘めた思い出だからというわけでは全然なくて、
ただ単純に、知り合ったそもそもなどを説明するのが面倒なだけなのであるが、
何はともあれ、
大切な気持ちを話すことが出来る相手ということだけは伝えられた筈だ。
杉江玲子
『砂のあしあと』
2019年2月14日(木)−2月24日(日)
ヒマダコーヒー でやれることを心から嬉しく思う。
約束してもいない約束ごとを、
ひとつ実現できた気分だ。
砂についたあしあとは、
はかないながらも、どこまでもずっと続いていく。
こどもの顔や小さな足、
冬の海のそば、静かな喫茶店での彫刻展
存分に愉しんでほしい。
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