ブラックバード、和名:クロウタドリについて前回書いた。
今回はその備考。
ビートルズの『ブラックバード』はマッカートニー曰く黒人女性の解放をテーマにしているらしい。後半に挿し込まれるクロウタドリのさえずりが印象的、まるで春や夜明けを告げるかのようである。
作曲家オリヴィエ・メシアンはクロウタドリの歌声を採譜して『世の終わりの為の四重楽奏』に落とし込んだ。バイオリンがクロウタドリの囀りを再現している。
世の終わりなどとは物騒であるが、どうやらこれはカタストロフと言うよりは歓びに満ちた神の国の到来を指しているように思える。
ともあれ解放を謳ったり、世の終わりを先導したりとクロウタドリも忙しい。
人はクロウタドリの歌声にいったい何を感じいるのだろうか。
デビッド・ボウイの『ベルベット・ゴールドマイン』にも曲の最後、鳥の声が現れる。
特にクレジットがある訳ではないものの、やはりこの歌声もクロウタドリのように思われる。
『ベルベット・ゴールドマイン』は退廃的で、背徳的で、艶かしい肉感的な曲だ。
『世の終わりの為の四重楽奏』が天国志向ならば、『ベルベット・ゴールドマイン』は悪魔=地獄志向とも言えそうだ。
天国にも地獄にも現れる、クロウタドリって、いったいなんなのだろう。
コラン・ド・プランシーによる有名な『地獄の辞典』によると、カイムという悪魔がいるらしく、クロウタドリの姿で、もしくは鳥の着ぐるみを着て現れるとか。
ナイスな奴だ。
悪魔に魂を売り渡すならこんな奴がいい。
悪魔に魂を売り渡すならこんな奴がいい。
さて、見た目の愛嬌とは裏腹に、なんでも悪魔の中で一番弁が立つ存在らしく、かの宗教家マルティン・ルターを論争で苦しめたという逸話も残っている。
現在は悪魔の総裁を務めるカイムももとは天使だったと言うから、ナルホド、多くの音楽家に霊感を与えてきたクロウタドリの正体はコイツなのではと勘ぐりつつマザーグースを紹介しよう。
イギリスのマザーグース(童謡)のうちでも人気があるとされる『6ペンスの歌』の主役は24羽のクロウタドリである。
6ペンスの唄を歌おう♪
ポケットにはライ麦がいっぱい♪
24羽のクロウタドリ♪
パイの中で焼き込められた♪
(以下略)
歌詞内容はまるで意味不明、まるで暗号のようである。
その意味を巡ってはさまざまな解釈があるようだが、クロウタドリが悪魔による罰を表しているという説もあるらしい。
こんなところにもカイムの影が…
とまれクロウタドリの正体が悪魔か天使か知らぬが、人々の感性に多大な影響を及ぼしてきたのは確かなようだ。
友との和解をブラックバードに例えてみたり、僕もまたクロウタドリに魅せられた一人に相違ない。
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