一枚、二枚、三枚、と皿を数えていくのだから、
まるで『番町皿屋敷』のお菊のようだ。
この怪談にはいくつかパターンがあるのだが、
おおむねは お菊という女性が化けて井戸から出るというものである。
そして皿の数を数えては
「一枚 足りない… うらめしや…」と嘆くのだ。
なんでも家宝の皿を割ってしまい、
手打ちにされた可哀想な女中だとか。
さて、お世話になっている うつわ屋さんの計らいで、
何枚か欲しいけれど、まとめては買えない器を、
月に一枚ずつ買い足しさせて貰っている。
必要分を長期で取り置きいただいているのだ。
僕だって恨めしい。
この貧しさが “うらめしや” だ。
ポンとまとめて購入できたらどんなに愉快だろうか。
けれども足りないことを嘆いていても仕方がない。
それよりかは、一枚、二枚、三枚と、
少しずつ増えていく悦びを大切にしよう。
僕は、笑って皿を数えていきたい。
ここはヒマダコーヒーという小さな喫茶店。
もしくは葉山町の皿屋敷である。
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