祖父と散歩をするのが日課でした。
たぶん、3歳とか4歳の頃でしょう。
家が近かったこともあり、
毎日 遊びに行っていたのです。
気に入った形の石を見つけては
それを拾って歩くのが散歩の途中の楽しみでした。
ですが、気をつけないと、たまに間違えて
乾燥して白くなった犬の糞を拾ってしまいます。
昔は今よりたくさん落ちていたものです。
ですので毎度
それが石なのか、はたまた犬の糞なのか、
祖父に確認しながら拾いあげていたのを覚えています。
昔の人は石を 雲の化石と考え、
雲古と呼んだと、
何かの本で読んだことがあります。
結局、古人も石と糞の見分けが
いまいちつかなかったのかもしれません。
行きも帰りも、散歩のあいだはずっと
祖父と手を繋いで歩いていました。
もしかしたら、
そんな僕の手を握るのが嫌なこともあったんじゃないかと、
今になっては思います。
だって、ばっちいですものね。
だって、ばっちいですものね。
分厚かった祖父の手に残る
大きな怪我の痕の感触も
今でもしっかり覚えています。
あれから随分経ちました。
あの時、空に浮かんでいた雲も、
そろそろ石化して、道ばたに落ちているかもしれません。
今ごろ、どこかの子供がそれを拾っていたなら面白いなと、
そんな想像をしています。
どうか、
犬の糞とは間違えませぬよう。
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