祖父は運動が好きな人でした。
若い時は野球をしていたと言いますし、
初老を迎えてもテニスを、また老後もゴルフを愉しんでいたものです。
なので、彼の指に遺る大きな瘤も、
僕はずっとスポーツによるマメか怪我の痕であろうと、
勝手にそう思っておりました。
その瘤の原因が、戦車のハッチで指を挟んで出来たものであると知ったのは、
僕が大人になってからのことです。
なんでも、戦地への配属を忌避する為に
自ら重い鉄のハッチに挟んで指を潰したという話です。
もちろん戦争中のことです。
その話を本人から聞いた時、
僕はほんの少しだけ怪訝な感情を抱いたことを白状しなければなりません。
気持ちの上でははっきり戦争反対なのにも関わらず、
兵役逃れはどこか不名誉で、
戦場で人をたくさん殺すことが栄誉あることと
知らぬうちに刷り込まれている自分がいたようです。
ハリウッド映画の見過ぎでしょう。
けれども僕のその当惑も、祖父の次のひと言で消し飛びました。
「でもそのお陰で、こうして ばあば(祖母)に逢えた」
そう、祖父と祖母はその後 出逢って結婚したのです。
もし彼が出兵していたなら…どうなっていたかは分かりません。
祖父のこの言葉を聞いた時から、
スタローンにもチャック・ノリスにも劣らない、
彼こそが僕にとっての英雄になりました。
両手でマシンガン放つばかりが英雄ではないのです。
7月8日(日)はその祖父の一周忌です。
法要のため店はお休みを頂戴いたします。
何卒ご理解ごと容赦をお願いいたします。
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