カワハギを前にすると必ず子供の頃を思い出す。
釣りに凝っていた父は、
週末の毎に海に赴いては、
小さなカワハギをよく釣って帰ったものだ。
母が刺身にこしらえてくれた
その釣果を口にするのが当時なによりの楽しみだった。
小さなカワハギから取れる切り身はごくわずか、
その希少性に加え、肝と醤油を溶く"肝醤油"なる大人の味の魅力も手伝い、
週末の手土産は、光り輝くご馳走として子供の眼には映った。
サンタクロースの真実について気付かされたのもちょうど同じ頃。
クリスマスの朝、起きると枕元には釣り竿が…
もっと幼稚なおもちゃが欲しかった僕にとって、
生まれて初めてのあまり嬉しくないプレゼント。
当時、釣りが好きだったのは僕ではなくて父。
………!!! そういうことか。
今にして思えば父子で釣りに行きたかったのだろう。
そんな親心も分からずに、父の息子はミニ四駆ばかりを走らせていた。
僕も気付けば当時の父の年齢を僅かに超していたようだ。
まだまだ至らないながらも、
それでも随分 大人になった。
肝醤油とサンタの不在。
カワハギがほんのちょっとだけ、
大人になるのを手伝ってくれたのだろう。
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