2019年7月27日土曜日

黒くて小さな天使






蚊が嫌いである。

蚊が嫌いでない人間なんて、そうはいないだろうが、僕の場合は極端に、大嫌いであるのだ。

そんなに蚊に食われる体質でもないくせにこの嫌い方はちょっと偏執的な気もするが、もしかしたら前世あたりがマラリアで命を落とすなど、そういう宿怨があるのかもしれない。

奴らも不快な羽音を立てたり、わざわざ痒くしたりしなければ、こんなに恨まれることもないだろうと思うのであるが、それだけでない。蚊はマラリアやデング熱など各種感染症を媒介する人類にとって最大の仇敵でもある。

もしかしたら蚊にその気はなくても人体のほうが敢えてアレルギー反応を起こし、吸われた箇所を痒くしてみせることで蚊への忌避や嫌悪感を促しているのかもしれない。痒くならなければ血を吸われることに無警戒になってしまうから。羽音も同様、不快に聴こえるよう人体があらかじめプリセットされているのかもしれない。


さて、ときに何のために存在するのか分からないなんて言われる蚊であるが、やはり何かしらの役割りを担っているのだろう。とはいえ実験的に行われた一部地域での試験では特定のエリア内の蚊を根絶させても生態系への影響は特になかったとのデータもある。

前述したように、史上最も多くの人間を死に至らしめている人類にとっての最大の天敵は虎でもライオンでもなく、蚊である。

仮に生態系への影響がないのなら絶滅させてしまうに如くはなさそうなものであるが、視点を人類主体から地球主体に移してみると、地球にとっての天敵は間違いなく環境を破壊する我々人間ということになる。

ならば蚊は、地球の敵である人類を攻撃し抑制する天からの使いであるとも考えられる。

人間が悪で、蚊が正義の味方。

この暴論もある程度は有用だろう。なぜならいつでも人間が正しいと過信するのも如何なものかと思うからだ。


蚊の正体は天使ということにしておこう。

それではそれで奴らを好きになるかといえばそんなこともなく、日ごろ無益な殺生をしない僕もこと相手が蚊になれば打つ、打つ、打つ。まるで親の仇のように。地の底まで追ってでも仕留めるくらいの執念を燃やしてしまうのが我ながらさもしい。

とはいえ人為的に絶滅させるのが正解とは思わない。やはり何かしらの歪みが出る筈だ。けれども僕と息子に寄ってくる蚊に関しては全力で迎撃する構えである。

ちなみに、ここ葉山では冬でもお構いなしに蚊が出る。よってこの醜い戦いも一年を通じて続けられているのだ。仮に悪魔と罵られようとこの黒くて小さな天使どもとのアルマゲドンは続くだろう。












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