あ、と思った次の瞬間には、
僕は自転車ごと渋谷の宙を舞っていた。
不注意のタクシーを避け切れず、
前方へと勢いよく投げ出されたのだ。
空中で「マジかよ」と呟やいたのを覚えている。
そしてそのまま路面に突っ込んだ。
身体中をしたたかに打ち付けたけれど、
意識ははっきりとしていた。
けれども、車内で様子を伺っているだけの運転手さんの態度が不服で
彼が声をかけるまで、しばらくは死んだふりを続けた。
そのあとは順当に。
お巡りさんが来て、救急車に乗せられて、病院に搬送。
流石にあちこち傷めていたけど、
骨折など大きな怪我はなく済んだのは幸いだった。
その事故で僕が得たもの幾つか。
・港区の総合病院の診察券 – セレブリティになったような気がして一寸嬉しかった。
・初めての救急車の中で撮ったセルフィーの記念写真。
・おでこの消えない瘤 – 雨が近づくと疼く。
・自転車に乗る時はヘルメットを被ったほうが良いという教訓。
・右手小指のつっぱり感と動作不良。
拳を傷めたせいだろう。
以来、右手小指の動きにぎこちなさが残る。
箸を持っても、ドリップポットを握っても、
いつも少しつっぱる感じがするのだ。
気にする程の違和でもないが、
ただここ何日か、この張り感が幾分強まり、若干の痛みを伴うようになった。
ただここ何日か、この張り感が幾分強まり、若干の痛みを伴うようになった。
この繁く感じる痛みと不便が
今よりはそれなりに若かったひと昔前の日々を思い起こさせる。
もう都心を自転車で疾駆することもないだろう。
妻に言わせると古傷が痛むのは歳の所為らしい。
今よりはそれなりに若かったひと昔前の日々を思い起こさせる。
もう都心を自転車で疾駆することもないだろう。
妻に言わせると古傷が痛むのは歳の所為らしい。
もしくは、昔を思い出すことさえも、歳の仕業なのかもしれない。
おでこの瘤も疼いてきた。
雨が近い。
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