今年はどんな仮装をするの?って、
僕がハロウィンの仮装などしそうにないのは知ってるくせに。
これはつまり、
即興で面白い答えを言いなさいというフリなのだ。
僕は毎年ムーンドッグだよと、
急ごしらえで言ってみた。
この応えが彼女を喜ばしたかはどうか知らん。
生まれついての偏奇はいざ知らず、
それ以上の奇抜な格好や振る舞いは出来やしない。
僕は内気なのだ。
けれども、奇矯なパフォーマーにこころ惹かれてしまうのは、
特に珍奇な出で立ちをしたミュージシャンに惹かれてしまうのは、
きっと僕のうちにも重篤な変身願望があるのだろう。
それを彼らに投影しているのだ。
本名 ルイス・トーマス・ハーディン。
路上を住み家とする盲目の音楽家である。
ムーンドッグとは、月に吠える犬を讃えての芸名だそうだ。
おふざけで言ってみただけで
僕がムーンドッグの仮装をすることはないだろう。
自分の殻はまだまだ破れぬのだ。
それならばせめて今夜は彼の曲を聴きながら
月に吠える犬の真似ごとだけでもしてみよう。
「ぬすつと犬めが、くさつた波止場の月に吠えてゐる。」
萩原朔太郎 『悲しい月夜』より
ワオーン。
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