2020年10月7日水曜日

結局、人でした。


閉店から半年が過ぎ、改めて思うことを綴りたいと思います。



さて、喫茶店を始めた当初、僕は店主である自分とお客様との間に必要以上のやりとりはいらないと思っていました。 

それこそ言葉を交わさずとももし目配せや微笑みの一つでコミュニケーションが完了するのならそれが理想型だったのです。 

人とお喋りするのは大好きですが、それよりも皆さんそれぞれの閑かで落ち着いた時間を楽しんでもらいたいと考えていたからです。 

ですので店を訪れてくれる皆さんには控えめな声でお過ごしいただくようお願いしておりましたし、僕自身もできるだけ気配を消して、図書館の司書さんや美術館の学芸員さんのような存在でありたいと望んでいました。 

今でもそれが間違っているとは思いませんし、個人的にもやはりどちらかというと物静かな空間を好みます。 


けれども、店を手放してみてなにが一番大切かと顧みれば、それは結局人でした。

人との関わりを最小限にしようと思っていた僕にとって人が一番大切だなんて、それではまるでパラドックスのようですが…


例えば、店を一軒つくって切り盛りしたという経験は大変な財産です。 
内装だって大工さんと一緒に作業をしました。レシピもいろいろ考えました。
常に未完成だったとはいえ自分の思いや美意識を形にできたことは大きな喜びです。

ですが小さな喫茶店を通じて得たご縁。喜んでくれた人、気に入ってくれた人、笑ったり語り合った人。そして友になった人。 

そういった人々との出会いこそ掛け替えのない一番のお宝だということを閉店から半年以上経った今でも実感します。 

またヒマダコーヒーが媒(なかだち)になって生まれたお客さん同士の交流、それが今も続いていることを知るのもこの上ない喜びです。


とはいえ実は、僕には少し対人めんどくさがり症なところがあります。 
どちらかというと内向的な性格ですし、すぐれた社交性もありません。一人で過ごすことも苦にはなりません。 

それでもなお、痺れるほどの喜びをもたらしてくれるものはいつも人なのだと、僕は本当にそう思います。 


店舗の営業中もたまにイベントや企画など催したりしましたが、如何せん日々の雑務に追われてしまい望んでいたほど人との協働の機会が持てませんでした。 

それら実現しなかったことらを宿題にし折々人との関わりを形にしていきたいと思っています。 
(また現在進行中でたくらんでいることだって…) 

その際にはまた皆さんに会えること、新たな出会いに恵まれることを何よりの楽しみにしております。

 面白いことが起こるのは、人と人の響き合いのなかからです。
 響き合っていきましょう。どうぞ宜しくお願いします。


2020年9月8日火曜日

果たして手紙は届くのか


かつて「手紙が必ず宛先に届く」ことについての哲学的な論争があったといいます。


「手紙は必ず届く」と唱える精神分析学者と「いやいや、届かない場合もある」と批判した思想家のあいだの対立ということですが、その詳しい内容は難しくて僕にはよく分かりません。


届くとか、届かないこともあるとか、当たり前のことを言っている気もしますが、きっと手紙というのも一種の比喩で、実際の郵便のことではないのでしょう。


でも手紙が届くかどうかが議論のタネになるだなんて、なんともほのぼのしていて思わずクスッとしてしまいそうです。


「プリーズ・ミスター・ポストマン」という曲があります。ビートルズが歌った曲ですから、ご存じの方も多いのではないでしょうか。


「好きな子からの手紙が来ているかもしれない、配達員さん本当にないの?もっとちゃんと郵便袋のなかを探してよ」というとても可愛らしい歌詞になっています。


ひと昔まえまで電子メールなんてありませんでしたもの。

皆きっと思い人からの手紙を一日千秋の気持ちで待ちわびたことでしょう。


哲学の先生方ももしかしたら若い頃の甘酸っぱさやほろ苦さを思い出して、少しヒートアップしてしまったのかもしれませんね。


ちなみに万国郵便連合という機関によると先生方の国フランスの郵便事業は世界第2位、日本の郵便は世界第3位という評価を得ているらしく、僕らは限りなく「届きやすい」手紙の恩恵に授かっているようです。



せっかくの世界第3位ですもの。活用しなくちゃ。

郵便局員さんに感謝しつつ、たまには手紙をしたためたいと思います。


果たして手紙は確実に届くのか…


その答えは、郵便受けを開いてみてのお楽しみ。

もしちゃんと届いていたらお返事書いてくださいね。お暇な時で構いません。

 

2020年4月9日木曜日

旅をすること、遊ぶこと。




常にテーマとして抱きながらもヒマダコーヒーの営業を通じてなかなか表現できなかったことのひとつに旅をすること、もしくは遊ぶということがあります。

旅や遊びも併せてのヒマダコーヒーとしたかったのですが、いざハコを構えてみるといかんせん日々の業務に追われてしまい、なかなか思ったような移動が出来ません。

店を手放した現在、これからのテーマとして掲げていくのは場所に捕われずに活動することです。

さて、そんな元ヒマダコーヒーのテナントにこの度tasobiさんが入りました。

旅+遊びでtasobiです。

tasobiさんは旅と遊びを通して食の作り手と受け手を繋ぐお仕事をされている会社で、食の安全性、自然環境への倫理もバッチリです。

まさか食+旅+遊びというヒマダの目指したスタイルを実践している企業が跡を継いでくれるだなんて嬉しいかぎりです。

しかもtasobi代表の幸作くんは、最ッ高の人物で、僕もすっかり仲良しになつてしまいました。

基本 事務所としてのスペースになりますので飲食店としての営業はないのですが、こまめにイベント/ワークショップなど催される筈ですのでつぶさにご確認ください。

思い入れのあるあの場所がこれからどう変化していくのか、そして株式会社tasobiがこれから何を見せてくれるのか楽しみで仕方ありません。

そうそう、たまにヒマダの活動を続けながらも僕は友人のやっている旅とアウトドアをテーマにした会社に合流しました。

旅とアウトドア。
望んだ環境に臨めるとはなんたる幸運。まさに渡りに船と言えるでしょう。

僕はこの新しい船に乗り込んで、次なる旅と遊びを始めます。

大変な時期ではありますが、きっと素晴らしい"たそび"(幸作くんによる造語)になるでしょう。

この航海のレポートも本ブログで紹介したいと思っております。引き続きのお付き合い宜しくお願いいたします。

それでは、ヨーソロ!




2020年3月19日木曜日

これがまぁ




大好きな句に、小林一茶の 「これがまあ 終の栖か 雪五尺」というものがあります。


長い漂泊を終え故郷に戻った一茶。

雪深い山村だけど、結局ここを終(つい)の栖(すみか)とするのだろうという諦めとも満足ともつかない、ユーモラスな態度がこの句からは滲み出ています。



さて過日をもちましてヒマダコーヒーの営業を終了させて頂きました。

工事期間も合わせればこの店とも丸4年の付き合いです。

とても楽しく幸せで、充実した時間になりました。

ですがそれと 同時に思うように進めなかったり、自分のだらしなさやさぼり癖に溜め息つくこともしばしば。

やり切れなかったこと、思い残すことを数えれば切りがありません。
だけれど これがまぁ、潮時です。

僕も一茶のような心持ちでドアを閉めたいと思います。

だって潮時って、引き際ばかりじゃなくって、新しいことを始める時にも使える言葉ですもの。


店舗としての営業はここで一旦おしまいですが、ヒマダコーヒーの活動自体がなくなるわけではありません。これまでとはまた違った新しいかたちで、気持ちのいい閑暇の時とおいしい喫茶を提案していきたいと思います。

時と場所をあらためて、必ずまたお会いしましょう。

ちなみに、本ブログ『今日もヒマダ』はもう少し続けていくつもりです。今後の活動などもこちらでお知らせしていく予定ですので、今しばらくのお付き合いをお願いいたします。



雪も溶け、季節は春になりました。

春の海 ひねもす のたりのたりかな

これも大好きな与謝蕪村の一句です。

たおやかな表情を見せる春の葉山の潮のように、のたりのたりと これからも勤しんで参りたいと思います。

お世話になった皆さんにはこの場を借りて篤く御礼申し上げさせて頂きます。
繰り返しになりますが、必ずまたお会いしましょう。

それでは!!


ヒマダコーヒー 齊藤啓介





























2020年2月23日日曜日

ヒマダのヴァイラス




クリアランス・セール

2/21(金) - 2/24(月)

11:00 - 17:00















口から入る物があなた達の身を穢すことはない。
あなた達の身を穢すのはあなた達の口から出るものなのだ。

とかなんとか、たしかキリストの言葉。


このクリアランス(ガレージ)セールは言わば、
これまで僕が呑み込んできたものの吐き出しです。

物欲や好奇心はクジラのようなもの。
大きな口で呑み込んできたもの達を一気に吐き出します。



まさか人の身を穢したいとは思いませんが、商品をお買い求め下さった方たちが少しでもヒマダウイルスに感染してくれたならと多少よからぬことを考えてしまいます。

次の活動のため、次またお会いする時のためウイルスの保持と拡散にご協力くださいって新型肺炎に恐慌するこの時世にする話題ではないですね。



とても楽しみにしていた海外に住む友達の帰省が、新型肺炎の影響で取りやめになってしまいました。葉山の町で過ごしているとまるで対岸の騒ぎのようにも思えてしまいますが、このようなところにも影響は及ぶのですね。

皆さんも風邪や花粉を含め体調にはお気をつけ下さい。
感染対策にご配慮のうえ宜しかったらお越しください。

お待ちしております!


































2020年2月21日金曜日

クリアランスセールのご案内




2/21(金)より2/24(月)まで。

セールを催します。

ヒマダコーヒーで使っていた家具や什器、店主の持つ古道具や古書などが所狭しと並びます。

ガレージセール、もしくはフリーマーケットと言っても良いのでしょうが、ここではクリアランスセールと呼びたいと思います。

クリアランスには片付ける、清算するといったいった意味がありますが、船の入港や出港の手続きにも用いられる言葉なのです。

クリアランス…

そう、新たな船出のためのセールです。

どうぞお気軽にお立ち寄り下さい。





*専用駐車場はございません。お近くのコインパーキングをご利用ください。

*どうしても…という場合を除き商品発送のサービスは致しません。

*期間中に限りお買い上げいただいた商品のお取り置き承ります。

*商品の梱包、レジ袋の用意はありません。必ずショッピングバッグのご持参をお願いいたします。


重さと軽さ




もっとも重い荷物というものはすなわち、
同時にもっとも充実した人生の姿なのである。
重荷が重ければ重いほど、われわれの人生は地面に近くなり、
いっそう現実的なものとなり、より真実味を帯びてくる。

それに反して重荷がまったく欠けていると、人間は空気より軽くなり、
空中に舞い上がり地面や、地上の存在から遠ざかり、
半ば現実感を失い、その動きは自由であると同様に無意味になる。

そこでわれわれは何を選ぶべきであろうか
重さか、あるいは、軽さか?

ミラン・クンデラ 『存在の耐えられない軽さ』より




この10kgは何よりも重く、
そして何よりも軽やかなのだ。